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不思議な力
店長情報 › 不思議な力 › 2016年03月11日

2016年03月11日

本当の親子のように

「お二人は本当の親子のように、仲がよくていらっしゃるのですね」
側室推挙の折のことだ。ヤンが師であるタルタルに向けて、そんなことを言ったことがあった。
確かにタルタルにとって、育ての親はあの叔父といっても過言ではないだろう。

ペガンには子がおらず、必然的に彼の弟であるマジャルタイの長子、ペガンにとっては甥にあたるタルタルが一族を率いる次期後継者として指名された。
兄のペガンが勇猛豪傑な戦士として若き頃より戦場を駆け回ってきたのに対し、弟のマジャルタイは生来寡黙なたちで争いを好まず、書斎にこもって学問に親しむことを何よりの愉しみとした。
学者肌であるマジャルタイの血をひくタルタルもまた、幼少期は父の抱える膨大な書物を友として育った。だが頃合をみて、大将軍の誉れ高き叔父のもとへあずけられることになる。

戦に明け暮れ、大都へ帰還したとしても長くは居所に留まることのないペガンだったが、タルタルは彼から直々に武芸を教わった。厳しい訓練に心身疲弊した時には、いつか実の父がねぎらいとともにかけてくれた言葉を思い出した。
「タルタル、いつかお前が兄上を補佐するのだ。あの方は時として大変な無茶をなさる。お前は様々な知識を得、力を蓄えなければならぬ。つねに兄上のお側にひかえ、お前が最良と思う道へ導いて差し上げるのだよ」
ペガンが戦地に赴き留守のあいだは難解な書物で兵法を学んだ。無論、武芸の鍛錬も怠ることはなかった。努力家の彼は一度たりともペガンの期待を裏切ったことはなく、叔父は打てば響くような聡い甥を実の子のように可愛がった。
「タルタルが乳飲み子の頃はよく、私が膝に乗せてあやしてやったものだ。それは賢い子でな、頬をつついたりしてもむずがることもなく、大人しく抱かれているのだ。私が炙りたての羊肉を食べさせてやろうとしたら、まだ歯も生えておらぬ子には早すぎる、とマジャルタイに止められたこともあったな。だがあの落ち着きはなった面構えは、どう見ても赤子のものではなかったぞ」

豪快な笑い声をあげるペガンを、杯をちびちびと傾けながらヤンが見つめている。タルタルらが口にしている酒気の強い焼酎ではなく、まろやかで口当たりのいい馬乳酒だ。ヤンが酒を得意としないことは既に彼らの知るところだった。
「乳飲み子に羊肉の塊を差し出すとは、実にペガン将軍らしいですね」
「ヤン、そなたはこの養父をからかっているのか?」
笑い混じりのヤンに言い返すペガンはどこか楽しそうだ。養女として引き取ったヤンに、早くも情が移り始めているらしい。
タルタルは酒で唇を潤しつつ、ちらと叔父の上機嫌な横顔を見やった。
「叔父上はなにかと、私に幼子らしからぬ扱いをなさいましたね」  


Posted by 不思議な力 at 13:00Comments(0)